築30年、40年と経過した戸建を売却するとき、多くの人が悩むのが「建物を壊して更地にしてから売るべきか」「古家付き土地として現況のまま売るべきか」という点です。
老朽化が進んだ建物は、雨漏りや傾き、シロアリ被害などが生じている場合も多く、買主の多くは“建て替え前提”で検討します。こうした場合、建物は資産ではなく「解体費用のかかるマイナス要素」として扱われることも珍しくありません。
そこで登場するのが「解体費込みでの売却」という考え方です。
これは、建物の解体費をあらかじめ販売価格に織り込んで売却する方法であり、売主が更地として売るケースもあれば、買主が解体を前提に費用を差し引いて購入するケースもあります。
本記事では、築古戸建を「解体費込み」で売却する際の仕組みや注意点、そして「更地にすべきか」「現況のまま売るべきか」を判断するための考え方を、不動産実務の視点から解説します。
解体費込み売却とは?
「解体費込みで売る」とは、建物を撤去する費用を販売価格の中に含める売却方法のことです。
老朽化した戸建住宅では、建物の価値がゼロどころか、マイナス資産とみなされる場合があります。 買主が「建物を壊して土地として利用したい」と考えている場合、建物があることで解体費分だけ買主の負担が増えるため、売却価格の引き下げを求められることになります。
このような場合、買主が負担するであろう解体費をあらかじめ見込んで販売価格を設定し、
「解体費込みの価格」として売り出すことで、スムーズな交渉が可能になります。
解体費込み売却が選ばれる主な理由は、下記の通りです。
- 建物が老朽化しており、再利用が困難
- 雨漏り・傾き・シロアリ被害などで修繕コストが高額
- 空き家期間が長く、残置物処理が必要
- 土地の立地が良く、建物よりも土地の価値が明らかに高い
- 周辺が新築住宅に建て替えられている地域で、買主も建て替えを前提にしている
※解体を売主側が実施する場合は「更地渡し」、買主に任せる場合は「古家付き土地」として販売されます。
解体費の相場と価格への影響
解体費は建物の構造や敷地条件によって変動します。一般的には、木造住宅で1坪あたり3〜5万円、鉄骨造で5〜7万円、鉄筋コンクリート造で7〜10万円程度が目安です。
例えば30坪の木造住宅であれば、90万〜150万円前後の費用がかかります。
これに加えて、残置物の処分費や庭木・塀の撤去費、アスベスト除去費、重機が入りにくい敷地での追加費などが発生することもあります。
解体費用を販売価格に織り込む場合、例えば周辺の土地相場が2,350万円で解体費が150万円かかる場合、「更地渡し」の販売価格は2,500万円、「古家付き土地」の販売価格はおおよそ2,350万円前後が目安となります。
売主としては解体費の見積もりを複数業者から取り、根拠ある金額を把握しておくことが大切です。見積もりが曖昧なまま価格交渉に臨むと、買主との間で「想定より費用がかかる」といったトラブルになりやすいからです。

更地渡しと現況売却のメリット・デメリット
「解体して更地にするか」「古家付きのまま売るか」については、それぞれにメリット・デメリットがあります。
二つのパターンについて、詳しく見ていきましょう。
更地渡し(売主が解体)
メリット
- 買主はすぐに新築計画を進められるため、需要が広がりやすい
- 見た目の印象が良く、売却スピードが早まる場合もある
- 解体後のトラブル(倒壊・雨漏りなど)を避けられる
デメリット
- 解体費を先に負担する必要がある
- 更地にすると住宅用地の固定資産税軽減が外れ、翌年の税額が6倍近くに増える
- 解体後に地中埋設物(基礎・浄化槽など)が見つかると追加費用が発生
古家付き土地のまま売却(買主が解体)
メリット
- 売主は解体手配や費用負担が不要
- 固定資産税の住宅用地特例が継続される
- 買主がリノベーション目的で購入する可能性もある
デメリット
- 見た目が悪く、内見時に印象が下がる
- 買主が解体費分の値引きを強く求めてくる
- 建物が古すぎる場合はローン審査に通らないこともある
解体前に確認すべき注意点
解体工事を行う前には、次のような点を必ず確認しておく必要があります。
こうしたリスクを事前に調べずに解体を進めると、後から大きなトラブルにつながることがあります。解体を検討する際は、仲介業者や建築士に相談しながら慎重に進めましょう。
- 再建築が可能かどうか:接道義務を満たしていない土地では、解体してしまうと再建築ができなくなる場合があります。
- 地中埋設物の有無:古い建物では、地中にコンクリート基礎や浄化槽が残っていることがあり、撤去費用が追加で発生することがあります。
- 建築基準法違反の有無:増築や改修によって法令に適合していない建物を解体すると、新築時に同じボリュームで建てられないケースがあります。
判断のポイント
築古戸建を更地にするか、現況のまま売るかを判断する際は、まず周辺の市場動向を確認することが重要です。近隣で新築分譲が進んでいるようなエリアでは、買主の多くが新築を前提に購入を検討します。こうした地域では、建物が残っていることで購入意欲が下がる傾向があるため、思い切って解体し更地として売り出すほうが成約スピードが早まるケースが多いでしょう。
一方で、資金的な余裕がない場合や、売却まで時間がかかりそうな場合は、古家付き土地として現況のまま売る選択が現実的です。この場合、売主は解体費用を先に支払う必要がなく、固定資産税の軽減措置も維持されます。また、最近ではリノベーションや再利用を目的とする買主も増えているため、築古物件でも意外と需要があります。
税金のタイミングにも注意が必要です。更地にすると住宅用地特例が外れ、翌年度から税額が上がるため、解体の時期と売却スケジュールを合わせて検討することで、無駄な税負担を避けることができます。
最終的な判断は、不動産会社に「現況のまま売る場合」と「更地にして売る場合」の両方の査定を依頼し、価格差や販売戦略を比較したうえで決めるのが理想です。築古戸建の売却は、立地条件・税金・費用・需要などを多面的に分析して判断することが成功のカギとなります。
まとめ
築古戸建を売却する際、「建物が古いから壊す」と単純に考えるのは早計です。更地にすれば見た目は良くなりますが、費用負担や税金リスクが伴います。現況のまま売る場合は費用を抑えられますが、販売まで時間がかかることもあります。
重要なのは、現況と更地の両面で価格・リスク・需要を比較することです。
焦って解体を決めず、専門の不動産会社に相談して最も合理的な方法を選びましょう。
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