不動産売却の際に売主に求められる「契約不適合責任」とは

不動産売却コラム

2020年4月1日の民法大改正により「瑕疵担保責任」が廃止され、新たに「契約不適合責任」が規定されてから5年を迎えようとしています。

不動産売買契約において、売買対象となる不動産が契約内容と一致しない場合には、売主は買主に対し「契約不適合責任」を負い、適切な対応が求められることになっており注意が必要です。

今回は、不動産売却時に課せられる「契約不適合責任」について詳しく見ていきたいと思います。

契約不適合責任とは?

契約不適合責任とは、不動産売買契約において、売主が買主に引き渡した不動産が契約内容に適合していない場合に、売主が責任を負うことを指します。これは、2020年4月の民法改正(民法第562条~566条)によって、「瑕疵担保責任」に代わる形で導入されました。

従来の瑕疵担保責任は、「隠れた瑕疵(売主も知らなかった欠陥)」が対象でしたが、新しい契約不適合責任では、契約書に記載された内容と違う状態であれば、売主に責任が発生します。たとえ売主がその問題を知らなかったとしても、契約内容に適合しなければ責任を問われる可能性があります。

契約不適合責任が発生するケース

契約不適合責任は、以下のような状況で発生します。

  • 物理的な問題:建物の雨漏り、ひび割れ、基礎の沈下、給排水設備の故障、電気系統の異常など
  • 法的な問題:建築基準法違反、用途地域制限違反、接道義務違反など
  • 権利の問題:売却時に抵当権が残っていた、第三者の所有権や地上権が設定されていたなど
  • 土地関連の問題:土地境界の不明確さ、測量結果の相違、埋設物の存在など
  • 契約違反:契約書に記載された付帯設備が使用できない、売主が保証した条件と異なるなど

従来の瑕疵担保責任では「隠れた瑕疵(売主も気づかなかった欠陥)」のみが対象でしたが、契約不適合責任では「契約内容に合致しない」すべてのケースが含まれ、売主にとってより厳格な責任が求められます。

買主の救済手段

契約不適合が発生した場合、買主は以下の法的手段を行使できます。

(1) 追完請求(修理・補修の請求)

不適合部分の修理や補修を売主に求めることができます。例えば、雨漏りがある場合は防水工事、給排水設備に問題がある場合は修理対応が求められます。

(2) 代金減額請求

修理が困難な場合や売主が修理に応じない場合、買主は売主に対し売買代金の減額を求めることができます。

(3) 損害賠償請求

契約不適合によって買主に経済的損失が発生した場合、売主に対して損害賠償を請求できます。

(4) 契約解除

不適合の程度が重大で契約の目的を達成できない場合、買主は契約を解除することが可能です。ただし、軽微な不適合では契約解除が認められないケースもあります。

(5) 責任追及の期限

契約不適合を知ったときから「1年以内」に売主へ通知しなければなりません(民法566条)。ただし、売主が意図的に問題を隠していた場合は、この期限が適用されない可能性があります。

売主が取るべき対策

(1) 事前の物件調査

売却前に不動産の状態を確認し、ホームインスペクション(住宅診断)を活用することでトラブルを防ぐことができます。特に築年数が古い物件では、給排水設備や基礎部分の調査が重要です。

(2) 契約内容の明確化

契約書に不動産の状態や保証内容を具体的に記載し、トラブルを未然に防ぎます。

  • 現状有姿売買特約:現状のまま引き渡す場合、その旨を契約書に明記
  • 契約不適合責任の範囲を限定:ただし、宅建業者が売主の場合は制限あり

(3) 重要事項説明の整合性

不動産会社を通じて売却する場合、重要事項説明書の内容と契約書の記載を一致させることが重要です。不整合があると、売主の責任が大きくなる可能性があります。

実際のトラブル事例と対応策

(1) 売却後に雨漏りが発覚

事例:買主が引き渡し後に雨漏りを発見し、修理費用を売主に請求。

対応策:事前に建物の状態を調査し、問題があれば修理する。「現状有姿」とする場合は契約書に明記し、買主に説明する。

(2) 違法建築が発覚

事例:売却後に増築部分が違法建築であると判明し、買主が契約解除を要求。

対応策:売却前に建築確認申請や登記内容を確認。違法部分がある場合は契約時に説明し、責任の所在を明確にする。

(3) 抵当権の抹消漏れ

事例:売買後、売主が抵当権を抹消していなかったため、買主が権利不適合を主張。

対応策:売却前に金融機関と調整し、抵当権を確実に抹消する。抵当権の抹消が完了するまで、売買契約の履行を条件付きとする。

まとめ

契約不適合責任は、不動産売買取引において売主が負う重要な責任です。トラブルを避けるためには、契約内容を明確にし、事前の物件調査を徹底することが不可欠です。

また、売主がリスクを軽減するためには、契約条項の適切な設定や買主への十分な情報提供が必要です。特に、法律や判例の動向を把握し、専門家(不動産会社、弁護士、司法書士など)と連携することで、安全な取引を実現できます。

不動産売買は高額な取引であり、一度トラブルになると解決に多大な労力と費用がかかるため、慎重な対応が求められます。契約締結前に適切な準備を行い、リスクを最小限に抑えることが重要です。

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