境界があいまいな土地でも売却できる?知らないとトラブルに発展する「境界」の基本と対処法

不動産売却コラム

はじめに

不動産を売却する際、建物や土地の状態だけでなく、「境界」が明確かどうかも重要なチェックポイントとなります。特に土地の売却を検討している方にとって、「うちの土地、境界がはっきりしていないけど売れるの?」という疑問は決して珍しいものではありません。

実際、境界が未確定の土地は日本全国に多く存在しています。そして、そのまま売却を進めようとしたとき、買主や不動産会社から「境界を確定してください」と言われて初めて問題に気づくケースも少なくありません。

本記事では、土地の「境界」とはそもそも何か、境界が未確定なままでも売却は可能なのか、また、確定させるにはどのような方法があるのかについて、わかりやすく解説します。

土地の境界とは

土地の「境界」とは、自分の土地と隣接する土地との“線引き”のことを指しますが、実はこの境界には2つの概念があることをご存じでしょうか。それが「筆界(ひっかい)」と「所有権界(しょゆうけんかい)」です。

筆界」は、法務局が管理する公的な土地の区画を示す線で、登記簿に記載されている境界を意味します。いわば、国が認める“区画の線”です。一方、「所有権界」は、実際の所有者同士がどこまでを所有するか合意している“所有の境界”のことです。

たとえば、古くからの慣習で実際に使っている境界と、登記上の筆界がズレていることがあります。そのような場合、法的にどちらを基準にすべきかという問題が発生します。売却時には、主に筆界が重要視されますが、両方の視点が必要となります。

土地の境界未確定のまま売却できるか

それでは、境界がはっきりしていない土地でも売却は可能なのでしょうか。結論から言えば、「売却は可能」です。ただし、いくつかの注意点があります。

土地の売却において、売主には「境界明示義務」があるとされています。これは、売買契約時に買主に対して、隣地との境界を明確に示す責任を売主が負うという考え方です。特に宅地建物取引業法においては、不動産会社が仲介する場合、境界に関する情報提供が求められる場面もあります。

しかし、法律上、境界が未確定であるからといって売却が絶対に禁止されているわけではありません。ただし、境界が不明確なまま売却する場合、次のような問題が発生する可能性があります。

  • 買主が境界不明確な点を理由に購入をためらう
  • 金融機関の融資審査が通りにくくなる
  • 将来、隣地とのトラブルの火種になる

これらのリスクを避けるため、多くの場合、売却前に境界を確定させることが推奨されます。特に、住宅地や市街地にある土地では、境界の明示がスムーズな取引の鍵となります。

土地の境界を確定させる方法

それでは、実際に境界が未確定な場合、どのような手続きを行えばよいのでしょうか。大きく分けると、以下の2つのアプローチがあります。

話し合いで解決する場合

まず最も基本的な方法が、隣接地の所有者との話し合いによる合意です。両者の協力が得られる場合、比較的スムーズに境界の確認が行えます。以下のような書類を作成することで、境界の明示ができます。

筆界確認書

隣地との筆界を双方が確認し、合意したことを証明する書類です。土地家屋調査士が立ち会い、測量結果に基づいて作成されます。

道路境界明示書

隣接しているのが公道である場合には、自治体(市町村)に申請を行い、道路管理者から境界を示してもらうことができます。行政立会のもとに境界杭を設置することもあります。

これらの書類をもとに、境界を図面化して明示すれば、買主にも安心感を与えることができ、売却が円滑に進む可能性が高まります。

話し合いで解決しなかった場合

隣地の所有者と話し合っても意見がまとまらない、あるいは隣地の所有者が不明・連絡が取れないなどの事情で合意が得られない場合、公的手続きを通じて境界を確定する必要があります。以下の2つが代表的な方法です。

筆界特定制度

筆界特定制度は、土地の「筆界(登記上の境界)」を明らかにするために、法務局が提供している制度です。民間同士の合意ではなく、法務局が第三者的に筆界の位置を判断・特定するため、トラブル回避や解決の一手段として注目されています。

主な特徴は以下のとおりです。

  • 申請主体:土地の所有者であれば誰でも申請可能。隣地所有者の同意は不要です。
  • 判断者:法務局の筆界特定登記官と、指定土地家屋調査士が、測量や資料調査をもとに筆界を判断します。
  • 対象:あくまで「筆界(登記上の境界)」に関する手続きであり、「所有権界(実際の利用状態などに基づく境界)」を争う場ではありません。

筆界特定制度のメリットは、裁判を経ずに公的な判断を得られる点です。また、隣地所有者の協力が得られなくても手続きが進むため、交渉が難航しているケースでも活用しやすい制度といえます。

ただし、法務局が判断するのは“筆界”のみであり、法的拘束力はないという点にも注意しなければなりません。「どんな結果であっても法務局の判断に従う」という気持ちで利用しないと、問題は解決しないということになります。

境界確定訴訟

境界確定訴訟は、裁判所において「土地の境界がどこにあるのか」を争い、最終的に裁判官の判断により境界を確定させる手続きです。筆界特定制度では解決できないような対立・争いがある場合に用いられます。

境界確定訴訟の主なポイントは以下の通りです。

  • 訴訟の目的:筆界と所有権界の双方が争点になるケースに対応可能。登記上の境界だけでなく、実際の利用状況や取得時の経緯も考慮される場合があります。
  • 原告・被告:境界を巡って争う隣地所有者同士が、原告・被告という立場で争います。
  • 証拠資料:土地の測量図、公図、境界標、固定資産税の課税区域、過去の売買契約書、口頭証言など、さまざまな証拠をもとに主張が行われます。
  • 判決の効力:裁判所が出す判決には強制力があり、確定すれば法的な境界線として第三者にも対抗できます。登記内容も判決に基づいて変更可能です。
  • 期間と費用:訴訟が長期化することが多く、1年〜2年以上かかるケースもあります。測量費用や弁護士費用、裁判費用も含め、負担は大きくなりがちです。

境界確定訴訟は最終手段ともいえる存在で、当事者間での話し合いが完全に決裂した場合や、境界をめぐる法的トラブルが表面化している場合に検討されます。

まとめ

土地の売却において、境界が未確定なままでも「売ること自体は可能」です。しかし、買主側の不安やトラブルリスクを考慮すると、境界明示は極めて重要です。売却をスムーズに進めたいのであれば、できる限り境界を確定させた状態で売却活動を行うことが望ましいと言えるでしょう。

まずは隣地所有者と協議し、合意のうえで筆界確認書や道路境界明示書を作成するのが理想的です。それが難しい場合には、筆界特定制度や境界確定訴訟といった手段を検討する必要があります。

不動産の売却は高額かつ一生に何度もない重要な取引です。境界の問題を先送りにするのではなく、早めに専門家に相談し、納得のいく形で次のステップに進めるようにしましょう。

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