2025年(令和7年)地価公示の動向と今後の不動産市場への影響とは?

不動産売却コラム

毎年3月に国土交通省から発表される「地価公示」。これは、全国の標準地について、その年1月1日時点の土地の価格を示すものであり、土地取引や不動産評価における重要な指標です。
首都圏を中心に地価の上昇が続いていることもあり、「2025年(令和7年)地価公示」は、多くの不動産関係者から注目されていますので、今回は、地価公示の主なポイントと、そこから読み解ける今後の不動産市場の展望について見ていきたいと思います。

地価公示とは? 〜土地価格の「ものさし」としての役割〜

「地価公示」とは、国土交通省が毎年3月に公表する、全国の標準地(約2万6,000地点)における1月1日時点の土地の価格を示す制度です。これは、土地取引の指標となる「公的な地価」の一つであり、土地に関する価格の透明性・客観性を担保する非常に重要な役割を果たしています。

この制度は1970年(昭和45年)に地価公示法に基づいて導入され、不動産市場の健全な発展や、税務・相続・公共事業などにおける基準価格の明示を目的としています。評価対象は、住宅地・商業地・工業地・農地など多岐にわたり、それぞれの地域の実情に即した「正常価格(市場性を有する適正な価格)」が設定されます。

「標準地」とは?

地価公示において評価される「標準地」とは、土地の価格動向を把握するために国が選定した地点で、その地域の代表的な土地のひとつです。実際の売買価格や需給動向を踏まえ、不動産鑑定士が複数の評価手法を用いて価格を算出しています。

標準地は、都市計画区域の市街化区域内を中心に設定されており、住宅地・商業地・工業地など土地の利用状況によって分類されます。これらの地点が毎年継続して評価されることで、地価の「時間的変動」を把握することも可能となっています。

どんな場面で使われるの?

地価公示の価格は、私たちの生活やビジネスにおいて多くの場面で活用されています。具体的には以下の通りです。

土地の売買における参考価格
地価公示は、売主・買主の双方が価格の妥当性を判断する際の「目安」となります。

不動産鑑定評価の基準
民間の鑑定評価でも、地価公示の価格は重要な比較対象とされます。

税務・相続・贈与の基礎資料
固定資産税評価額や相続税評価額(路線価)を算出する際の根拠として使われます。

公共事業の用地取得価格の算定
国や地方公共団体が道路整備や再開発などのために土地を取得する場合、地価公示の価格を もとに算定されるケースが一般的です。

地価動向の分析・政策立案
国や地方自治体にとっては、都市計画や住宅政策の立案に必要なデータとして活用されています。

他の公的地価との違い

地価公示と似たような「公的地価」には、次の3つもあります。

  • 都道府県地価調査(基準地価):都道府県が年に1回(7月1日時点)で行う調査。発表は毎年9月。
  • 相続税路線価:国税庁が公表するもので、相続税・贈与税の課税評価に使われる。地価公示価格のおよそ80%程度。
  • 固定資産税評価額:市区町村が3年に1度見直す評価額で、固定資産税や都市計画税の算出根拠。地価公示価格の70%程度が目安。

これらと比べても、地価公示は「公正な土地取引の指標」としての性質が最も強く、不動産市場の健全性を保つための基盤となっています。

令和7年地価公示の注目ポイント

令和7年(2025年)地価公示では、全国の地価が引き続き上昇傾向にあることが確認され、特に都市部や再開発エリアを中心に顕著な動きが見られました。ここでは、今回の地価公示における代表的な傾向と、それが意味するところを詳しく解説します。

全国平均で地価は4年連続の上昇傾向に

令和7年の地価公示においては、全国の全用途平均が前年比2.7%の上昇となり、これで4年連続の上昇となり上げ幅はバブル崩壊以降で最大となりました。

コロナ禍で一時的に落ち込んだ地価も、経済活動の再開、観光業の回復、インフラ整備の進展などを背景に、再び上昇基調を強めています。

住宅地:都市部を中心に上昇が継続。再開発やタワーマンション建設など、都市機能の集約によって地価が押し上げられています。

商業地:特に都心・繁華街において回復基調が顕著。インバウンド需要の復活や大型商業施設の開業が後押しとなりました。

工業地:物流施設やデータセンター用地への需要増加により、郊外を中心に上昇が続いています。

三大都市圏 vs 地方圏:上昇の質が分かれた構図に

地価の上昇は全国的に見られましたが、その背景や成長ドライバーには地域差があります。以下に、三大都市圏(東京圏・大阪圏・名古屋圏)と地方圏における特徴的な動きを整理します。

【三大都市圏】

東京圏では、特に再開発が活発な品川・虎ノ門・渋谷エリアなどで商業地の地価が二桁の伸びを見せた地点も。
住宅地:平均変動率は4.2%と4年連続で上昇し、上昇幅が拡大
商業地:平均変動率は8.2%と4年連続で上昇し、上昇幅が拡大

名古屋圏では、名駅エリアの再開発や中部圏の産業集積により、住宅地・商業地ともに上昇が続いています。
住宅地:平均変動率は2.3%と4年連続で上昇したが、上昇幅はやや縮小
商業地:平均変動率は3.8%と4年連続で上昇したが、上昇幅はやや縮小

大阪圏は、大阪・関西万博を見据えた開発が進む夢洲(ゆめしま)周辺やうめきたエリアで価格上昇が顕著。
住宅地:平均変動率は2.1%と4年連続で上昇し、上昇幅が拡大
商業地:平均変動率は6.7%と3年連続で上昇し、上昇幅が拡大

【地方圏】

地方都市では二極化が進んでおり、「上昇エリア」と「横ばい〜下落エリア」に分かれる傾向が鮮明です。

地方でも人口減少が緩やかな中核市(例:福岡市、金沢市、広島市など)は地価上昇を維持。
一方、人口減少や高齢化が進む地域では、依然として地価の回復には時間がかかる状況。

地方圏では、交通利便性・生活インフラ・雇用環境が整った都市に人気が集中する「選別的な上昇」が見られます。

注目エリア:再開発とインフラ整備が地価を押し上げる

今回の地価上昇の主因として挙げられるのが、各地で進行中の都市再開発事業やインフラ整備プロジェクトの存在です。これらの事業が周辺エリアの地価を押し上げる要因となっています。

  • 品川駅周辺(東京):「高輪ゲートウェイシティ」開発が本格化し、周辺の住宅地・商業地で高い伸び。
  • うめきた2期地区(大阪):2024年春に先行まちびらきが行われ、地価への期待感が反映。
  • 札幌駅前(北海道):新幹線延伸に伴い、駅周辺の再開発が進行。地価も上昇傾向。
  • 福岡市中心部:天神ビッグバン・博多コネクティッドなど再開発が集中し、九州の中でも突出した地価上昇を記録。

住宅地にも再び「投資」の視点が戻りつつある

コロナ禍で停滞していた不動産投資のマインドが再び活性化し、住宅地にもその影響が出始めています。

分譲マンションの供給が集中するエリアでは、地価の先高観が価格に織り込まれる形で上昇。
資産性を重視した住宅購入者の動きにより、駅近・ブランドエリアの土地価格が堅調。

また、国内外の投資家によるインカムゲイン型不動産(賃貸住宅・シェアハウスなど)への関心も再び高まっており、地価の底堅さを支える一因となっています。

令和7年の地価公示は、単なる「回復」ではなく、日本の土地市場が次のフェーズである「持続的かつ選別的な成長局面」へと移行していることを示す内容となりました。都市部を中心に広がる地価上昇の波は、今後も継続していくことが予想されています。

不動産売却のタイミングについては、地価動向を踏まえて検討することが求められますので、早めの不動産会社に相談しつつ進めることをおすすめいたします。

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