共有名義の物件でも売却できる!?共有名義の不動産をスムーズに売却する方法とは

不動産売却コラム

不動産の所有形態にはさまざまなパターンがありますが、複数人が一つの物件を共同で所有する「共有名義」は、相続や夫婦・親族間での共同購入など、生活の中で比較的よく見られる形態です。たとえば、両親から相続した実家を兄弟姉妹で共有しているケースや、夫婦で住宅ローンを組み、それぞれが持分を有するケースなどが典型例として挙げられます。

しかし、いざその不動産を売却しようとする段階で、「共有者全員の合意が必要なのか?」「一部の持分だけを売ることは可能なのか?」など、複雑な法律上の問題や手続きが浮上することがあります。共有名義の不動産売却は、単独名義とは異なる特有のルールが存在し、慎重に進める必要があります。

本記事では、まず「共有名義とは何か」という基礎知識から、実際に売却を行うための具体的な方法、さらにその際に注意すべきポイントまでを、専門家の視点で詳しく解説していきます。

不動産の共有名義とは

不動産の「共有名義」とは、一つの不動産について複数人が所有権を有している状態のことを指します。登記簿には、各所有者の名前と、それぞれの持分(割合)が明記されます。例えば、夫と妻が2分の1ずつ持分を保有する場合、登記簿には「持分1/2」といった記載がなされます。

このような共有状態では、それぞれの共有者が自分の持分については自由に処分や譲渡を行う権利を持っていますが、不動産全体の利用や処分(例:売却や賃貸)には、共有者全員の合意が必要となるのが原則です(民法第251条~第256条)。

また、共有には次のような形態があります。

  • 按分共有(あんぶんきょうゆう):持分の割合が具体的に決まっている最も一般的な共有形態。
  • 合有(ごうゆう):持分が不明確な形態。寺社や共有墓地などに多い。
  • 総有(そうゆう):法人格のない団体が所有する特殊なケース。

本記事では、日常的に発生する「按分共有」を前提に話を進めていきます。

共有名義の不動産を売却する方法

共有名義の不動産を売却するには、いくつかの方法があります。以下に代表的な3つの方法を解説します。

1. 共有者全員の同意を得て売却する

もっとも一般的かつ望ましい方法は、全員の合意を得て、不動産を一括で第三者に売却することです。この場合、所有者全員が不動産売買契約書に署名・押印し、所有権移転登記にも共同で関与する必要があります。

実務的には、共有者全員が売却の意思を示し、必要書類(印鑑証明書・本人確認書類など)を用意する必要があります。遠方に住む共有者がいる場合や、高齢で判断能力に不安がある場合には、委任状を用いた代理人の活用や、成年後見制度の利用が検討されます。

2. 自分の持分のみを売却する

共有名義のうち、自分の持分のみを売却することも民法上は可能です。これを「持分売却」といいます。この場合、他の共有者の同意は不要ですが、実際に買い手を見つけるのは非常に難しいのが現実です。

なぜなら、買主は見ず知らずの他人と不動産を共有するリスクを背負うことになるからです。そのため、持分だけを買い取る業者や投資家向けの売却となり、売却価格も相場より大きく下がる傾向にあります。

また、民法第252条により、持分を他人に譲渡する際には他の共有者に「持分の先買権」が発生するため、売却の前に通知し、同条件での購入意思の有無を確認する必要があります。これを怠ると、トラブルとなる可能性があるので注意しましょう。

3. 共有物分割請求訴訟を活用する

どうしても他の共有者の同意が得られない場合、最終手段として、裁判所に「共有物分割請求」を行うことができます。これは民法第256条に基づく制度で、家庭裁判所または地方裁判所に申し立てを行い、共有関係を解消する方法です。裁判所は以下のいずれかの方法で分割を命じることになります。

  • 現物分割物理的に不動産を分ける(戸建てや土地などで可能な場合)
  • 代償分割一人の共有者が他の共有者の持分を買い取り、単独名義とする
  • 換価分割不動産を競売にかけ、代金を持分に応じて分配する

特に換価分割は、売却価格が市場価値よりも大幅に下がることが多く、実質的に共有者全員にとって損失となる可能性が高いため、慎重な判断が求められます。

共有名義の不動産を売却する際の注意点

共有者との意思疎通が鍵

売却においては、共有者全員の意思が一致していることが最重要です。特に相続で取得した不動産の場合、兄弟姉妹との関係性が複雑なことも多く、話し合いが難航するケースも珍しくありません。可能な限り早期に意見を共有し、合意形成を図ることがトラブル回避につながります。

税務処理と特例適用の確認

売却により譲渡所得が発生した場合、それぞれの共有者ごとに課税関係が生じます。このとき、3000万円特別控除や軽減税率の特例を適用するには、共有者個別に「居住用財産」の要件を満たしていることが必要です。たとえば、相続人の一人がすでに他の持ち家に居住している場合、特例が適用されないこともあるため、税理士などに事前に相談すると安心です。

書類の準備と手続きの煩雑さ

売買契約、登記手続き、税務申告など、共有者の数だけ書類と確認事項が増えます。特に遠方に住む共有者がいる場合には、郵送手続きや委任状の準備など、時間的・労力的な負担が増大します。不動産会社や司法書士のサポートを受けることで、効率的に進めることが可能です。

おわりに

共有名義の不動産の売却は、法的にも実務的にも注意を要する複雑な取引です。共有者全員の協力と合意が得られる場合はスムーズに進みますが、そうでない場合には、持分売却や訴訟など、慎重な判断が求められる選択肢も視野に入れる必要があります。

トラブルを未然に防ぐためにも、共有状態を維持したまま放置しないことが大切です。定期的に共有者間で意思確認を行い、将来的な活用方針について話し合っておくことが、結果的に全員にとってメリットとなります。

複雑な事例については、不動産会社・司法書士・弁護士など、専門家の力を借りて、円滑な売却と納得のいく分配を目指しましょう。

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