家を建てたときや購入したときに受け取った「住宅性能評価書」、売却を考え始めてから書類を見直し、「この評価書があれば高く売れるのだろうか」と気になった方もいるのではないでしょうか。
住宅性能評価書は、住宅の性能について第三者機関が評価した結果を示す書類です。売却時には、外観や内覧だけではわからない建物の特徴を伝える資料になります。ただし、評価書があることと、売却価格が高くなることは分けて考える必要があります。
大切なのは、どのような性能が評価されているかを把握し、現在の建物の状態とあわせて説明することです。この記事では、住宅性能評価書の基本から、査定や買主の判断にどう役立つのか、売却前に準備しておきたいことまで解説します。
住宅性能評価書とは?まずは種類と評価内容を確認
住宅性能表示制度は、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく制度です。国が定める共通の基準に従って、登録住宅性能評価機関が住宅の性能を評価し、その結果を等級や数値などで示します。制度の利用は任意であり、評価書がないことだけで住宅の性能が低いとは判断できません。
売却前に確認したいのが、手元の評価書の種類です。同じ「住宅性能評価書」という名称でも、評価を行った段階が異なります。
- 設計住宅性能評価書:設計図書を審査し、設計段階の住宅の性能を評価したものです。完成した建物を検査した結果ではないため、建設住宅性能評価書と区別して扱います。
- 建設住宅性能評価書(新築住宅):施工段階と完成段階の検査を経て、評価結果をまとめたものです。新築時に、現場での確認を受けたことを示す資料になります。
- 建設住宅性能評価書(既存住宅):すでに建っている住宅について、現況検査による評価結果などをまとめたものです。新築時の評価書とは、評価する時点や内容が異なります。国土交通省
評価の対象には、構造の安定、劣化の軽減、維持管理への配慮、温熱環境・エネルギー消費量などがあります。ただし、選択して評価を受ける項目もあるため、評価書を取得している住宅でも、すべての項目が評価されているとは限りません。
また、「評価書がある」という事実だけで、各項目が高い等級であるともいえません。書類の表紙だけで判断せず、評価された項目と結果を確認しましょう。
査定価格と買主の評価には、どのような影響がある?
住宅性能評価書は、建物の性能を査定担当者に説明するための資料になります。たとえば、築年数や見た目だけではわからない構造や劣化対策について、評価結果を示すことができます。
国土交通省の「中古戸建て住宅に係る建物評価の改善に向けた指針」でも、住宅の性能や維持管理、リフォームの状況を踏まえて建物を評価する考え方が示されています。評価書を保管している場合は、査定を依頼する段階で提示し、建物のどの部分を評価する資料として扱うのか、担当者に確認するとよいでしょう。
ただし、住宅性能評価書は、売却価格を保証する書類ではありません。 性能を評価した結果が、そのまま売買価格に換算されるわけではなく、今回確認した公的資料でも、「評価書があれば一律に何%高く売れる」という根拠は確認できません。
査定を受ける際は、評価書の有無だけで価格の上乗せを求めるのではなく、周辺の取引事例や現在の建物の状態とあわせて、価格の根拠を説明してもらうことが大切です。建物の性能に関する評価と、市場で成立する価格を区別して確認しましょう。
買主に対しては、住宅を比較するための具体的な情報として役立ちます。「しっかりした家です」「断熱性に配慮しています」という説明だけでは、どのような根拠があるのかわかりません。評価書があれば、評価された項目について共通の基準に沿って説明できます。住宅性能表示制度も、住宅の性能を相互に比較できるようにすることを目的の一つとしています。
一方で、買主への説明では、評価結果の意味を広げすぎないよう注意が必要です。断熱等性能等級などの記載があっても、実際の室温や光熱費まで保証するものではありません。等級だけを示して「必ず暖かい」「光熱費がこの金額になる」と説明することは避けましょう。
また、新築時の評価書と、売却時点の建物の状態は別に確認する必要があります。その後の修繕や改修、不具合についても資料を整理し、評価書とあわせて伝えることが、買主が判断するための情報提供になります。

売却に活かすために、準備しておきたいこと
住宅性能評価書を売却に活かすには、不動産会社へ「評価書があります」と伝えるだけでなく、内容を確認できる状態で渡すことが大切です。売り出した後に探し始めるのではなく、査定を依頼する前から準備しておきましょう。
確認・整理しておきたいのは、次のような情報です。
- 評価書の種類と交付日:設計・建設のどちらか、新築時・既存住宅のどちらの評価かを確認します。複数ある場合は、まとめて提示できるようにします。
- 評価された項目と結果:どの項目に、どの等級や数値が記載されているかを確認します。未評価の項目まで説明に含めないよう注意しましょう。
- 評価後の修繕・改修の記録:工事の時期、内容、施工会社がわかる契約書や図面、報告書などを整理し、評価を受けた後の変更を説明できるようにします。
- 現在わかっている不具合:雨漏りや設備の故障など、把握している状態を整理します。評価書があることを理由に、現在の状態の説明を省略しないようにします。
特に、評価後に増改築や間取り変更などを行っている場合は、以前の評価結果と現在の建物との関係を自己判断しないことが大切です。広告や購入希望者への説明に使う前に、建築士や登録住宅性能評価機関などの専門家に確認しましょう。
新築時の評価書がない住宅でも、既存住宅として住宅性能評価を受ける制度があります。ただし、新築時の施工状況をさかのぼって確認するものではありません。既存住宅の評価は外観の目視を中心とするため、確認できる範囲には限界があり、建物の欠陥がないことを保証する制度でもありません。
これから評価を受ける場合は、最初に「売却にあたって、何を確認・説明したいのか」を整理しましょう。現在の劣化状況を把握したいのか、特定の性能を確認したいのかによって、相談する内容が変わります。取得による値上がりを前提に申し込まず、不動産会社と評価機関に目的を伝え、評価内容、必要書類、費用、期間を確認して判断することが大切です。
既存住宅の評価では、図面などの準備が必要になるほか、共同住宅では管理組合等の同意や情報が必要になる場合もあります。売却の予定が決まっている場合は、手続きに必要な条件を早めに確認しておきましょう。
まとめ
住宅性能評価書は、建物の性能を客観的な資料で伝え、査定や買主の比較検討に役立てられる書類です。ただし、評価書があるだけで高く売れると決まるものではありません。
評価書の種類や内容を確認し、その後の修繕履歴や現在の状態とあわせて提示することが大切です。売却を考え始めたら、手元の書類を整理して早めに不動産会社へ相談し、査定や販売活動でどう活用するかを確認しましょう。
根拠・出典
国土交通省「住宅の品質確保の促進等に関する法律・住宅性能表示制度関連資料」
一般財団法人日本建築センター「住宅性能評価・申請要領」
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