高すぎる査定価格には要注意?不動産会社の査定額を比較するときの重要ポイント

不動産売却コラム

不動産を売却するとき、複数の不動産会社に査定を依頼すると、会社によって査定価格に差が出ることがあります。同じ不動産であれば、少しでも高い査定価格を提示した会社に売却を任せたくなるのは自然なことです。

しかし、査定価格が高いからといって、その価格で売却できるとは限りません。

不動産売却では、「査定価格」「売出価格」「成約価格」はそれぞれ意味が異なります。特に重要なのは、最終的に売主と買主が合意する「成約価格」です。査定価格だけを比較して不動産会社を選ぶと、相場より高い価格で売り出した結果、販売が長期化し、最終的に大幅な価格変更が必要になることもあります。

そこで今回は、査定価格と実際の成約価格の違いを整理したうえで、不動産会社の査定額を比較するときに確認したいポイントを解説します。

査定価格と成約価格は同じものではない

不動産売却では、価格が一つだけ存在するわけではありません。

一般財団法人不動産適正取引推進機構の資料では、売却時の価格について「売却希望価格」「査定価格」「売出価格」「購入希望価格」「成約価格」という段階に分けて説明されています。査定価格は媒介業者が価格査定マニュアルなどに基づいて査定した価格、成約価格は交渉の結果、売主と買主が合意した実際の売買価格です。

つまり、査定価格は将来の売却価格を保証する金額ではありません。

たとえば、不動産会社が4,000万円と査定したからといって、必ず4,000万円で購入する買主が現れるわけではありません。査定価格などを参考に売主と不動産会社が売出価格を決め、市場に物件を公開し、購入希望者からの反響や価格交渉を経て、最終的な成約価格が決まります。

査定価格と成約価格を混同しないことが、不動産会社を比較するうえで非常に重要です。

また、不動産会社が提示する一般的な売却査定は、不動産鑑定士が行う法律上の「不動産鑑定評価」とも異なります。国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」でも、宅地建物取引業者が書面で査定根拠を示す場合には、不動産鑑定評価書ではないことを明記するよう示されています。

不動産会社の査定は、「市場でどの程度の価格で売却できると考えるか」を判断するための重要な材料ですが、確定した売却価格ではないと理解しておきましょう。

なぜ不動産会社によって査定価格が違うのか

複数の不動産会社へ査定を依頼すると、査定価格が数百万円単位で異なることもあります。しかし、査定価格に差があること自体が問題なのではありません。

不動産には一つとして完全に同じものがなく、比較する取引事例や物件特性の評価方法によって判断が変わるためです。

国土交通省が公開する「不動産情報ライブラリ」でも、不動産価格は面積や形状、前面道路などの個別要因によって変化し、同じ不動産でも取引事情によって価格が異なることがあると注意喚起しています。

マンションであれば、同じ建物でも階数、方位、眺望、専有面積、間取り、室内状態などによって価格は変わります。戸建てや土地であれば、土地面積、接道条件、形状、建物の築年数や状態、周辺環境などが価格判断に影響します。

さらに、不動産会社がどの取引事例を比較対象とするかによっても査定結果は変わります。

ここで注意したいのが、複数社の中で一社だけ突出して高い査定価格を提示している場合です。

もちろん、他社が把握していない直近の成約事例を持っている、物件の長所を適切に評価しているなど、高い査定価格に合理的な理由がある場合もあります。そのため「査定価格が高い=信用できない」と判断するのも適切ではありません。

重要なのは、なぜその価格になるのかを説明できるかどうかです。

宅地建物取引業法第34条の2第2項では、宅地建物取引業者が媒介契約における価額または評価額について意見を述べる場合、その根拠を明らかにしなければならないと定めています。

さらに国土交通省の運用指針では、その根拠として価格査定マニュアルや同種の取引事例など、合理的に説明できるものを示すことが求められています。

したがって査定価格を比較するときは、「A社4,200万円、B社3,900万円、C社3,800万円」という数字だけを見るのではなく、4,200万円と判断した具体的な根拠まで確認することが重要です。

査定価格を比較するときに確認したいポイント

査定結果を受け取ったら、まず確認したいのは比較対象となった成約事例です。

売出中の物件価格だけではなく、実際に売買が成立した成約事例をどの程度確認しているかがポイントになります。売出価格は売主が希望して設定した価格であり、その価格で実際に売買されたとは限らないためです。

国土交通省の「不動産情報ライブラリ」では、不動産取引価格情報に加え、指定流通機構(レインズ)が保有するマンション・戸建て等の成約価格情報も確認できます。売主自身が周辺相場を確認するときの参考資料としても利用できます。

査定価格を比較するときは、少なくとも次の点を確認するとよいでしょう。

  • どの成約事例を査定の根拠としているか
  • 成約事例と売却物件の条件にどのような違いがあるか
  • 査定価格と推奨する売出価格はいくらか
  • その売出価格でどの程度の期間を想定しているか
  • 反響が少ない場合、どの時点で価格や販売方法を見直すのか

特に確認したいのが、「査定価格」と「売出価格」の関係です。

売却開始時には、査定価格より少し高めの価格から市場の反応を見るという販売戦略もあります。一方で、周辺の成約相場から大きく離れた価格設定を長期間続ければ、購入検討者の比較対象から外れ、販売期間が長期化する可能性があります。

そのため、不動産会社には「いくらで売り出しましょうか」だけではなく、「なぜその価格で売り出すのか」「どのような反響を想定しているのか」「反響が想定を下回った場合はどうするのか」まで確認することが重要です。

また、境界や権利関係、建物の構造・劣化状況、法令上の制限などが価格に大きく影響する物件では、不動産会社だけでは判断できない事項もあります。個別に専門的な判断が必要な場合は、不動産鑑定士、土地家屋調査士、建築士、司法書士、税理士、弁護士など、内容に応じた専門家に確認してください。

まとめ

不動産会社の査定価格は、実際に売れることが保証された価格ではありません。

査定価格を参考に売出価格を設定し、市場で購入希望者を募り、条件交渉を経て、売主と買主が最終的に合意した価格が成約価格となります。そのため、不動産会社を比較するときに「最も査定価格が高い会社」を選ぶだけでは十分ではありません。

大切なのは、その査定価格に合理的な根拠があるかを確認することです。

周辺の成約事例、物件固有の条件、市場動向などをどのように評価したのかを確認し、査定価格とともに販売方法や価格戦略についても比較しましょう。

高い査定価格に明確な根拠があるのであれば、その評価には検討する価値があります。一方で、具体的な成約事例や価格算定の説明がなく、「この価格で売れます」といった説明だけの場合は慎重な判断が必要です。

不動産売却では、査定価格の高さではなく、「根拠のある価格査定」と「成約までを見据えた販売戦略」を提示できる不動産会社を選ぶことが重要です。

不動産の売却をご検討中の方は、複数社の査定価格だけでなく、査定の根拠や販売方針まで比較したうえで、ご自身の物件に適した不動産会社へ相談することをおすすめします。

出典・参考資料

  • e-Gov法令検索「宅地建物取引業法 第34条の2」
  • 国土交通省「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」
  • 国土交通省「不動産情報ライブラリ」
  • 国土交通省「消費者の皆様向け 不動産取引に関するお知らせ」
  • 一般財団法人 不動産適正取引推進機構「不動産を売るときのポイント」