戸建物件の査定では、「建物価値はゼロです。(もしくはほぼ0円)」と提示され、違和感を持つ方は少なくありません。これは「家が物理的に使えない」という意味ではなく、税務上の減価償却の考え方と、中古戸建の市場評価(買い手の判断・リスク評価)が組み合わさって起きる事象です。
このブログでは、減価償却(法定耐用年数)について整理したうえで、実務で建物価値がゼロになりやすい理由、そして売主側で価値を残すための方法について解説いたします。
建物の減価償却について――「法定耐用年数=市場価値」ではない
まず押さえるべきは、減価償却は税務・会計上のルールであり、市場価格(売れる値段)を直接決めるものではないという点です。
税務上、建物は時間の経過や使用で価値が減る資産として扱われ、構造・用途ごとに耐用年数が定められています。国税庁の「主な減価償却資産の耐用年数表」では、木造(住宅用)22年、鉄筋コンクリート造(住宅用)47年等と示されており、これは「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」に基づくものです。
耐用年数を超えると、税務上の帳簿価額(簿価)が小さくなりやすく、結果として「建物価値は、ほぼゼロ」という説明がされやすくなります(ただし計算・事情により一律ではありません)。
ただし、法定耐用年数は、税務の計算上の基準であって、建物寿命(居住可能年数)そのものではないことに注意しましょう。不動産市場では「維持管理」「改修内容」「性能・法適合」「買い手の解体意向」などが価格に強く影響し、税務の減価償却とは別ロジックで売価が形成されます。
※税務の取扱いは個別事情で変わり得ます。確定申告・取得費・減価償却の具体計算が絡む場合は、税理士等の専門家に確認が必要です。
実務で“建物価値ゼロ”が起きやすい3つの理由
ここからは「不動産査定の現場」で起きている話を踏まえてご説明いたします。
不動産仲介における戸建査定は、鑑定評価(不動産鑑定士が基準に基づき評価するもの)とは異なり、「売れる可能性が高い価格」を優先して組み立てることが多いため、建物の評価が極端になりやすい傾向があります。
理由1:買い手が“土地目的”になりやすい(古家=解体前提)
築年数が進んだ戸建は、買い手が「リフォームして住む」よりも「解体して建て替える」「土地として活用する」判断をするケースがあります。そうなると、価格の中心は土地になり、建物はプラス評価されにくく、場合によっては解体費用を織り込むため建物が“価値ゼロ”扱いになり得ます。
これは法律で決まっているのではなく、需給による実務判断です。
理由2:建物の“品質情報が不足”すると、リスクとして差し引かれる
中古戸建は個体差が大きく、同じ築年数でも状態はバラバラです。買い手が気にするのは、構造・雨漏り・シロアリ・配管等の見えないリスクです。これらが不明確だと、買い手は最悪の状況を想定する必要がでてくるため、価格交渉は厳しくなります。
国土交通省も、既存住宅取引で第三者が状態を把握するための「インスペクション(既存住宅現況検査)」の考え方や、目視中心の非破壊検査としての位置付けを重視しています。
理由3:原価法で評価しても、最終的には市場価格(取引事例)に収れんする傾向が強い
不動産鑑定評価の世界では、価格を求める基本的手法として原価法・取引事例比較法・収益還元法が整理されています。
このうち、戸建の建物価値を説明しやすいのは原価法(再調達原価から減価を控除)ですが、仲介査定の最終着地は「周辺で実際に売れている価格帯(取引事例)」に引っ張られます。
周辺事例が土地値中心で形成されているエリアでは、原価法で一定の建物価値が出ても、査定価格として反映することが難しい場合があります。

建物価値を“ゼロにしない”ために売主ができること
建物価値がゼロになりやすい要因としては、(1)土地目的の買い手が多い、(2)建物のリスクが見えない、(3)取引事例を優先的に考慮、の3点が挙げられます。したがって、売主側としては「建物を評価できる材料を増やす」「買い手の不安を減らす」「売却方針(土地売りか戸建売りか)を決める」ことで、建物価値を認めさせることが重要になります。
1)インスペクションで“見えない不安”を減らす
国土交通省は、既存住宅の安心取引のため、建物状況調査(インスペクション)について、実施者要件(講習修了した技術者)や、確認対象(構造耐力上主要な部分・雨水浸入防止部分)等を整理した資料を公表しています。
これにより、買い手側の「最悪を想定した値引き」を抑えやすくなります。なお、調査結果の解釈や補修要否の判断は専門領域のため、建築士等の専門家に確認が必要です。
2)査定時に提出できる“材料”を揃える
以下は、建物が「ゼロ扱い」されにくくするために有効な提出物の一例です。揃うほど、査定説明と買い手の納得が作りやすくなると考えられます。
- 修繕履歴(屋根・外壁・防水・給湯器・配管など)
- インスペクション結果(指摘事項と是正状況)
- 境界・越境関係の整理資料(測量図等)
- 主要設備の更新状況(キッチン・浴室・トイレ・空調 等)
- 雨漏り・シロアリ等の有無と対処履歴(不明点は“不明”と整理する)
3)「土地として売る」か「建物を活かして売る」かを最初に決める
売り方がブレると、査定も販売戦略も中途半端になり、結果的に価格が伸びません。
- 土地目的が強いエリア:解体更地渡しが有利なこともある(ただし解体費・各種手続は個別性が強く、専門家に確認が必要)
- 建物需要が見込めるエリア:現況のまま+検査/履歴で価値訴求、またはポイント改修で訴求
この判断は「周辺の成約事例」「買い手属性」「再建築可否や法規」「建物状態」で変わります。根拠をもって説明できる不動産会社に査定を依頼するのが成功のカギとなります。
まとめ
戸建査定で建物価値がゼロになりがちな理由は、単なる「築古だから」ではありません。税務上、建物は耐用年数に基づき減価償却され、木造住宅22年・RC住宅47年などの区分が示されていますが、これは市場価格を直接決めるものではありません。
実務では、買い手が土地目的になりやすいこと、建物の状態情報が不足するとリスクとして差し引かれること、そして最終的に周辺の取引事例(市場)に価格が収れんすることが重なり、「建物:0円」という表現が起きやすくなります。
建物価値を残したいなら、インスペクションや修繕履歴の整備などで“不確実性”を減らし、売り方の方針(土地として売るのか、建物を活かして売るのか)を早期に決めることが重要です。
税務・法規・建物の技術判断に踏み込む局面では、税理士・建築士・不動産鑑定士等、専門家に確認が必要な範囲があることも前提に、根拠のある査定説明ができる不動産会社へ相談するのが最短ルートだと考えます。
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