不動産の売買契約を締結すると、「これで売却手続きはほぼ終わった」と安心してしまいがちです。しかし、実際には売買契約から決済・引渡しまでの間にも、売主が準備しておかなければならないことが数多くあります。
必要書類が不足している場合などには、決済自体を延期しなければならないこともありますので、契約後は引渡し日から逆算して準備を進めることが重要です。
本ブログでは、売買契約を締結した後から引渡しまでに売主が行うべきことを、3つの段階に分けて解説します。
契約後すぐに確認すること-契約条件と引渡し準備を整理する
売買契約を締結したら、最初に売買契約書をもう一度確認しましょう。特に重要なのが、残代金支払日・引渡し日、土地の境界に関する取り決め、付帯設備の扱い、契約不適合責任、特約事項などです。
契約締結後は、原則として契約内容に従って売主・買主双方が履行に向けて準備を進めることになります。したがって、「引渡しまでに何をしなければならないか」は、一般論だけではなく、実際に締結した売買契約書を基準に確認する必要があります。
まず確認しておきたいのは、次のような項目です。
- 残代金決済・引渡しの日時
- 境界明示や測量についての取り決め
- 建物・設備の修理や撤去についての約束
- 残置物の撤去条件
- 契約不適合責任の範囲と期間
- 買主の住宅ローンに関する特約
特に戸建や土地の売却では、境界について注意が必要です。不動産適正取引推進機構の「不動産売買の手引」でも、決済・引渡し前の確認事項として境界標等による境界の確認が挙げられています。
契約によって「確定測量後に引き渡す」「境界標を明示する」などの条件が定められている場合は、期限に間に合うよう土地家屋調査士との調整を進めなければなりません。境界の確定方法や測量の必要性は土地ごとに異なるため、**土地家屋調査士や不動産会社など専門家に確認**してください。
戸建では、付帯設備についても改めて確認します。売買契約時にエアコン、給湯器、照明器具などを「残す」としていたにもかかわらず、引越し時に誤って撤去してしまうとトラブルになります。逆に、撤去すると約束した家具や家電、物置などを残したままにすることも避けなければなりません。
重要なのは、契約後に売主の判断だけで物件の状態を変更しないことです。契約時に確認した状態を基本として、約束した条件で引き渡せるよう準備を進めます。
決済前までに進めること-住宅ローン・登記・引越しを準備する
住宅ローンが残っている場合は、決済前の金融機関との調整が特に重要です。
住宅ローンを利用している住宅には金融機関の抵当権が設定されています。一般的な売買契約では、売主は買主の完全な所有権行使を妨げる抵当権などの負担を除去したうえで引き渡すことになります。不動産適正取引推進機構も、抵当権等が設定されている場合には、売主の責任と負担で除去・抹消する必要があると説明しています。
売却代金で住宅ローンを完済する場合は、決済日に「残代金受領→ローン完済→抵当権抹消→所有権移転」という手続きを連動させるのが一般的です。
住宅ローン残債がある場合は早めに金融機関へ連絡し、完済予定日や必要手続きを確認しておきます。金融機関によって必要な手続きや所要期間が異なるため、事前に確認しましょう。
同時に、引越しの準備も進めます。居住中の住宅を売却した場合、原則として契約で定めた引渡し日までに退去し、約束した状態で買主へ引き渡せるようにしておかなければなりません。
決済前までの主な確認事項を整理すると、次のようになります。
- 住宅ローンの完済手続きと抵当権抹消の準備
- 登記識別情報など登記関係書類の確認
- 印鑑証明書など必要書類の準備
- 引越し・残置物撤去
- 鍵や設備関係書類の整理
- 境界・付帯設備・物件状況の最終確認
特に登記識別情報などを紛失している場合は注意が必要です。直前になって判明すると追加手続きが必要になることがあるため、早めに司法書士へ伝えることが重要です。
また、引渡し前に建物や設備の状態が契約時から変化していないか確認しておきましょう。給湯器が故障した、雨漏りが発生したなど、契約後に新たな問題が判明した場合は、自己判断で放置せず速やかに不動産会社へ連絡し、買主への説明や対応方法を検討します。

決済・引渡し当日に確認すること-残代金受領から鍵の引渡しまで
決済日は、不動産売却の最終段階です。
不動産適正取引推進機構では、「決済」を買主が売主へ残代金全額を支払うこと、「引渡し」を売主が代金受領と引換えに物件を買主へ引き渡し、所有権移転登記の申請手続きを行うことと説明しています。
一般的には司法書士が登記関係書類を確認し、所有権移転や抵当権抹消に問題がないことを確認した後、買主から売主へ残代金が支払われます。その後、固定資産税等の精算、仲介手数料などの支払い、鍵や関係書類の引渡しを行います。
当日に確認したい主な内容は次のとおりです。
* 住宅ローン残債の返済
- 司法書士による登記書類の確認
- 買主からの残代金の着金確認
- 固定資産税・都市計画税等の精算
- 仲介手数料等の支払い
- 鍵・図面・設備関係書類等の引渡し
固定資産税・都市計画税については少し注意が必要です。税法上の納税義務者は、その年の1月1日現在の所有者であり、年の途中で売却しても納税義務者そのものが買主へ切り替わるわけではありません。一方、不動産売買では当事者間の合意により、引渡し日を基準として未経過分相当額を精算することになります。国税庁は、売主が買主から受け取る未経過固定資産税等相当額について、譲渡所得の計算上、譲渡対価の一部として収入金額へ算入するとしています。
決済が完了したら、鍵を買主へ渡して物件を引き渡します。戸建で建築確認関係書類、設計図面、設備説明書、保証書などを保管している場合は、買主へ引き継いでおくとよいでしょう。不動産適正取引推進機構も、戸建住宅では配置図・平面図・仕様書・設備図などが将来のリフォームや増改築に役立つとしています。
ただし、鍵を渡して終わりではありません。売主には、契約内容に適合した不動産を引き渡す義務があります。
例えば、「雨漏りはない」という契約内容で売却したにもかかわらず、引渡し時点ですでに雨漏りが存在していた場合には、契約不適合となる可能性があります。契約不適合があれば、買主から追完、代金減額、契約解除、損害賠償などを求められる場合があります。もっとも、具体的な責任範囲は契約条項や当事者の属性などによって異なるため、問題が生じた場合は不動産会社・弁護士など専門家に確認することが必要です。
まとめ
不動産の売却は、売買契約を締結した時点ではまだ完了していません。契約後から決済・引渡しまでに必要な手続きを確実に進め、契約で約束した状態の不動産を買主へ引き渡して、初めて一連の売却手続きが完了します。
特に売主が早めに確認しておきたいのは、契約条件、住宅ローン残債と抵当権、登記書類、境界や付帯設備、引越し・残置物撤去です。これらを決済直前まで放置すると、引渡し日に間に合わなくなる可能性があります。
また、戸建や土地では、境界、越境、設備の不具合、登記内容など、専門的な確認が必要になることもあります。問題が判明したときは自己判断で処理せず、不動産会社を窓口として土地家屋調査士、司法書士、建築士など必要な専門家に確認することが重要です。
売買契約から引渡しまでをスムーズに進めるには、契約後に何を、いつまでに準備するのかを不動産会社と共有しておくことが重要です。これから不動産を売却する方や、すでに買主が決まって引渡し準備を進めている方は、早めに不動産会社へ相談し、自分の物件で必要となる手続きを具体的に確認しておきましょう。
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